本の内容
定価
1512円
発売日
2015-05-15

未来を変えるために私がしていること、 きみたちにできること

ほんまもん

絶望的な医療現場で働く医師が、現状を打破するためにとった意外な行動とは?

おもな内容

本書は、皮膚科医の岸本和裕先生が、臨床の現場で身につけてきた「知恵」や「心の在り様」を、若き医療人たちに向けて語った内容をベースに、先生の医療人としての半生をまとめたものです。


本書を読むと、「こんな先生が近くにいてくれたら!」と多くの方が思うはずです。ひとつエピソードをご紹介します。


手術を受ける際、医師から「同意書」を求められた経験のある方は多いと思います。手術で「100%成功」ということはあり得ません。だから、医師は何かあったときのために同意書を取ります。言葉は悪いですが「保険」の意味があるわけです。

ところが、岸本先生はこれまで同意書を取らずに手術を行なってきました。なぜか? 

仮に同意書を取っても、医師と患者の間に信頼関係が築かれていなければ、何かあった場合には同意書の有無に関係なく、必ず問題化するものだからです。同意書よりも信頼関係を築くことのほうがずっと重要なのです。


では、先生は信頼関係を築くために何をしたでしょう?


先生は、手術の現場に患者さんのご家族1名が立ち合えるようにしました。そして、患部を見せながら、説明しながら手術を行なったのです。究極の情報開示です。


――子供が高熱を出して病院へ連れていき採血や点滴を受けるとき、あるいは家族の誰かが手術を受けるとき、たいていは「外でお待ちください」といわれます。あれってどう思いますか? 外で待っている間じゅう、ソワソワと落ちつかず、不安な気持ちを我慢しなければいけないわけです。同意書は書いたものの、処置室や手術室の中では何がどのように行なわれているのかまったくわからない。これはとても辛いし不安です。

 私は、「患者さんがどういう状況で処置とか手術を受けているのかを、家族は実際に知りたいに違いない」と思いました。それは家族にとって、同意書よりもはるかに価値のあることじゃないかと。(本書より)


「患者目線に立って」と医師たちは口にします。それは当然のことだとわかっているから。しかし、本当にそれを実践している医師は多くありません。その理由を、「本当の意味での患者目線ということを、誰もきちんと教わってきていないからだ」と先生はいいます。


医療人にとって、専門的な「技術」や「知識」の習得は不可欠です。しかし、そうやって身につけたものはただの「手段」であり、患者を治すための「道具」に過ぎません。しかし多くの場合、その習得自体が目的となってしまっている。どんなに立派な道具を持っていても、それを使う人間が強く、真っ直ぐでなければ、本当の意味で役に立つとはいえないというのに――そう先生はいいます。


こうした考え方の根底にあるのが、先生のいう「人間学」です。道具を正しく使いこなすためには、そのための学習が必要なのです。それが「人間学」です。そして、ひとりでも多くの医療人が「人間学」を身につけることで、日本の医療は必ず今よりもずっと良い方向へ向かうはずだ、そう信じて、先生は本書を著しました。


岸本先生の「人間学」は医療人に限らず、多くの働く人にとってヒントになるものです。興味のある方はぜひ読んでみてください。きっと胸に希望の灯がともるはずです。


《聴講生の声》本書より抜粋

●先生の授業は、私が大学に入ってからおそらく一番有益で考えさせられるものでした。大学受験のときは、面接対策で「医師に必要なものは知識・技術だけでなく人間性云々…」というフレーズをよく意味もわかりもせず言っていた覚えがあります。知識だけあっても役に立たないということはわかっていたけれど、だから医者になる上で何が必要なのかはまったくわかっていなかったし、大学に入れば見えてくるものだと勝手に思っていました。でも実際の大学の授業でそういったことは教えてもらえず、このまま医師になっていいのかという思いがあったので、今日の授業を聞いて本当によかったと思っています。


●岸本先生のお話は、岸本先生ご自身の経験に基づいた内容で大変説得力がありました。あのような「人間学」を教えてくれた先生は今までいません。医師にとって最も重要なものを岸本先生から学びました。今日の岸本先生のお話を心にとめ、明日から気持ちを新たに、愚直にがんばりたいと思います。


●やはり患者さんの笑顔を見ることが一番の幸せです。先生は何人の人たちを救ってきたのでしょう。感激して言葉にできません。患者さんの思いを大切にする看護師になります。そのために、今を一生懸命、勉強に時間をかけていきたいと思います。


●私も皮膚炎で悩んでおり、泣きながら薬を塗る毎日です。担当の皮膚科医は皮膚を診てもくれないし、効かないといっているのに「様子見」とか「ストレスだから仕方ない」といわれ、どうしようもない気持ちになります。だけど今日岸本先生の話を聞いて、こんな先生もいるんだと感動しました。患者さんの訴え、苦しみに耳を傾けて、わかろうとしてくれる姿勢を見て、私も救われたような気持ちになりました。私も忙しい中で流れ作業のように淡々と関わるのではなく、きちんと一人一人の患者さんの苦痛に向き合い、話を聞いてあげられるような看護師になりたいと思います。


月刊JMS 2015.6月号に紹介されました!

200通を超える読者からのメッセージを頂戴しています!


§著者紹介§

岸本和裕●きしもとかずひろ

1970 年兵庫県生まれ。福島県立医科大学医学部医学科卒。同大学臨床教授。医学博士。日本皮膚科学会認定専門医。竹田綜合病院皮膚科科長。

アレルギー性疾患のみではなく、良性・悪性皮膚腫瘍の手術(皮弁術、植皮術)、レーザー治療、感染症、自己免疫性疾患、炎症性角化症、陥入爪手術、爪矯正術など幅広い分野の診療を行なっている。皮膚科過疎地域で地域医療に明け暮れる傍ら、日々の臨床における問題点を解析して多くの論文を世に送り出し、医学に貢献することを目指している。現在まで、臨床論文、臨床研究論文を中心に、筆頭著者論文は約100編。そのほか、医大や看護学校での授業や、研修医への指導などを通じて後進の育成にも取り組んでいる。「医学」と「人間学」をバランスよく学び、より質の高い「医療」を目指して修業中。

著書に『これで最後の…アトピー卒業ブック』『アトピー実戦テキスト~アトピー卒業ブック2』(健康ジャーナル社刊)がある。