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健康ジャーナル社編集部スタッフが、現在進行形の雑誌・単行本の編集こぼれ話、心に留めておきたいこと、怒り、愚痴(?)などを綴ったページです。どうぞごらんあそばせ。
「わたしのハイセンス物語」(当社編集の某冊子に連載中)に応募がきません。レギュラー企画のはずなのに、最近では隔月になっています。このままでは消滅の危機です。素敵なイラストレーターさんに挿し絵をつけてもらえるのだから、もっと応募してくれてもいいのに。
そこで仕方なく自分の物語を作ってみました。
ご意見ご感想はやめてください。
「はじめてのひとり暮らし」
小さな頃から、入浴剤には特別な思い入れがあった。山梨のおじいちゃんちのお風呂のお湯はいつも明るい黄緑色で、ずっとうらやましかったのだ。山のてっぺんにいるときみたいな匂いがしたことをよく覚えている。お湯につかるとじんわりと温まって、誰かにだっこされてるみたいにほっとした。
「ねぇ、うちのお風呂も緑色にしようよ」と母にねだったけれど、聞いてもらえなかった。「うちは貧乏だからだめよ」って言われた。よくわからなかったけれど、自分でなんとかしようって思った。だから黄緑色の絵の具をお風呂のお湯に混ぜた。そしたらひどく叱られた。以来、入浴剤の話を家でできなくなってしまった。
そんな私も大学生になった。往復6時間の通学を3か月がんばったけれど、遊ぶことはおろか勉強も満足にできない環境に耐えかねて、夏休みを機にひとり暮らしすることを決意した。もちろん親には反対された。けれど決めたものは決めたのだ。
やっと見つけた都心で家賃3万円以下の部屋は、風呂なしだった。あこがれのひとり暮らし。好きな食器を揃えて、評判のパン屋でパンを買って、おいしいコーヒーをいれて、お気に入りの入浴剤を見つけて、パリジェンヌみたいに優雅に暮らそうと計画してたのに。実際思うようにはいかないものだ。計画は挫折。こんなおんぼろアパートで、貧乏学生にパリの暮らしが再現できるかっつうの。
そんなときさっそくダンボール箱が届いた。どうせ食べなくて腐らせる野菜や、センスの悪い衣料品なんかがつまっているに違いない。差出人は山梨のおじいちゃんだ。
ダンボールを開けると、懐かしい匂いがした。山の匂い、これは…。中には黄緑色の缶と、30cm四方くらいの大きさの入れ物と、紙切れが入っていた。
紙切れを広げると、右上がりになった癖のある文字で、こう書かれていた。
「現代っ子のあなたにとって家にお風呂のない生活は大変でしょうが、風邪を引いて銭湯に行けない日には、この桶にお湯をはって、この入浴剤をたっぷり入れて、じっくり足をつけなさい」
私はずいぶん変わったのに、あのころから全然変わらないおじいちゃんの、たのもしい笑顔が心に浮かんだ。
(F)
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