2001年2月〜2002年9月掲載
   

 

 






健康ジャーナル社編集部スタッフが、現在進行形の雑誌・単行本の編集こぼれ話、心に留めておきたいこと、怒り、愚痴(?)などを綴ったページです。どうぞごらんあそばせ。

 


Dejeuner a Paris

 数年前の夏のお話です。
 ディジョンに滞在して4日目、そしてその日は日曜日。やはり古い町らしく商店はほとんどが律儀に閉まっている。博物館などはもうひととおり訪ねた。そんなときホテルのテラスやカフェで1日何もせず…、なんて格好良く過ごせない貧乏性な私達。そこで思い立った。中世の佇まいを留める城塞の町オーセールを日帰りで訪ねよう。以前に堀内誠一がイラスト入りの文で紹介していて、とても気になっていた町。
 時刻表を調べてみたら十分に日帰りできそうだった。TGVばかりでなく、ローカルな列車の旅もいいじゃない。ディジョン駅から乗車して、乗り換えるのはラロシュ・ミジェンヌという、町というよりはほんとに小さな村。ジャンクションになっていて、オーセールへ行くにはここでローカル線に乗り換えるのだ。待ち時間も10分程でよかった、と思いながらホームに停車している列車に乗り込む。ローカル線にしてはナカナカ立派なもの、さすがは国営。
 けれどその列車、発車の時刻になっても動き出す気配がない。まあ、ヨーロッパの鉄道なんて定刻に動くほうが珍しい。急いでいるわけでもないしね。そんな私の目の端をひなびた感じの列車が遠ざかって行った。このとき何かイヤな予感はしていたんだけれど、連れには何も言わないでおいた。
 私達の乗った列車も数分後には発車して、次第にスピードアップ。そしてそのスピードを緩める気は毛頭ないらしく、いくつもの駅を通過していく。最初に停車したのは通るはずのない、ディジョン・パリ間の幹線上の駅だった。ここにきては列車を乗り間違えたとイヤでも認めざるを得ない。
 そのうちに検札係がやって来た。40歳前後の女性だった。切符を見せながら私は言った。「違う列車に乗ってしまったらしいです」
「オーセールはまったく逆の方向ですよ」と彼女。
「次はどこに停まりますか?」
「パリですよ」
「パリ?!」
 彼女はオーセールに戻る列車の時刻を調べてメモをくれた。やはりラロシュ・ミジェンヌで乗り換えなければならないらしい。それから彼女は私の切符を裏返して、そこにフランス語で何やら書き始めた。
「これを引き返す列車の検札係に見せてください」
 事の次第を書いてくれて、追加料金を取られないようにしてくれたらしい。外国人に冷たいといわれているフランス人、しかも公務員にこんなに気遣ってもらえるとは。よっぽどかわいそう、もしくはお馬鹿さんに見えたのだろうか。
「さすがは自由・平等・博愛だね」などと言いながら、パリのリヨン駅に降り立った間抜けな2人組は、駅構内の売店で生ハムとチーズのバゲットサンドとカフェを買ってディジョン行きの急行に乗り込んだ。
「生ハムのサンドイッチはパリに限るね」
「いかにも」

AZ


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