2001年2月〜2002年9月掲載
   

 

 






健康ジャーナル社編集部スタッフが、現在進行形の雑誌・単行本の編集こぼれ話、心に留めておきたいこと、怒り、愚痴(?)などを綴ったページです。どうぞごらんあそばせ。

 


 あんまり自分の無知ぶりを披露するのは、編集者として問題があるかとは思うのですが、前回「妾」という言葉についての「赤面勘違いエピソード」を書いたところ、ああそういえばこんなこともあった、あんなこともあったと、恥ずかしい話が雪崩のように出てくる始末なのです。もう少し知的な、社会性あふれるものを書きたいのですが、なんだかもうほかのことは考えられなくなってしまいまして、今回も恥を忍んで、その「勘違いネタ」でまとめさせていただくことにしました。

 それはまだ僕が20代前半の、初々しい編集者の卵だったころの話です。
 初々しい編集者とはいっても、いっぱしの口を利く生意気な小僧でもありまして、ベテラン編集者と文学論など闘わせた後(ここらへんからもう冷や汗ものですね)、あるひとりの作家の話題になったのでした。

 ちょうど僕はその作家にちょっとした原稿を依頼しているところでした。しかし、その作家は生意気な小僧にすんなりと原稿を渡すはずはなく、締め切り日をだいぶ過ぎて、僕はそうとうイライラしているときでもありました。
 で、僕はその作家についてさんざんな悪口を言い放ったのです。どんな悪口だったのかはもう忘れましたが、一通りの罵詈雑言を言ったあと、それを黙って聞いていたベテラン編集者がにこっと笑い、僕にこう尋ねたのです。

「君、岡目八目って知っているかい?」

 オカメハチモク? おかめ? ああ、おかめひょっとこのおかめのことか。でもハチモクってなんだろう。8つの種目ってことかなあ。
 僕の頭の中には、おかめのお面をつけた人が、8種類の障害物を次々に、おもしろおかしく挑戦している姿が浮かびました。そして、僕のへっぽこコンピュータは、ああ、岡目八目とは、そういうストーリーの古典落語なんだ、という結論を打ち出したのです。へっぽこコンピュータは、岡目八目を「目黒のさんま」と同義語であると解釈したのですね。
 で、僕は詳しくはその「古典落語」の内容を知りませんでしたから、「ええ。でもまだ原作は読んでいないんです」などと答えてしまったのでした。

 ふだんは静かな編集部内でしたが、このときばかりは大きな笑い声で沸き返りました。またやってしまったのでした……。しかしもうあとの祭り。文学論もなにもかも吹っ飛んで、それから編集部は、僕への「日本語教室」に早変わりしてしまったのでした。

 ちなみに「岡目八目」とは、傍目八目、つまり傍から他人の囲碁を見ていると、自分が実際に対局しているときよりは、よく手がわかるということで、転じて、物事を客観的に見た方がいろいろなことがわかりますよ、ということなのですが、あのときのベテラン編集者は、婉曲表現を用いて、小生意気な僕に一言言いたかったんですね。ふうっ。

 僕はその会社で、「破廉恥」という言葉が日本語ではなく、イタリア語なのかと思っていたなどと発言したりもして(これって『ハレンチ学園』の影響なんでしょうね)、すっかり「面白いことを言うヤツ」というレッテルを貼られ、諸先輩から飲み屋へのお誘いは急激に多くなりました。人気者になったつもりで、声が掛かればほいほいとついていった僕でしたが、これって「ケガの功名」なのか、「ブタもおだてりゃ木にのぼる」なのか、どちらでしょうかね……。

(S.Y)


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