2001年2月〜2002年9月掲載
 

 

 




監修:藤田紘一郎(医学博士・東京医科歯科大学教授)

昔の人はお腹をとても大事にしていました。たとえば、腹巻き、ウンチ、「カイチュウ」、発酵食品などなど。
お腹を大事にすることが健康のカギを握っていると知っていたからです。
ところが、現代に生きる私たちはお腹を大切にしない生活が多く、そのために健康を損なったり病気になったりしています。
昔の人の知恵を見なおして、もっとお腹を大事にして健康づくりに役立てていきましょう。

 昔の子どもは必ずといっていいほど腹巻をしてお腹を大事にしていました。
 川や海で遅くまで遊んだり、泥んこ遊びをしたり、日が落ちるまで外で遊んでいました。
これにより、外で「キタナイ」ものに触れるので、「バイキン」などに対する免疫力が自然と培われていったのです。外で遊ぶと虫や動物などさまざまなものに出くわします。そういうもののひとつひとつが驚きと感動となって心の健康にもよい影響を与えていたのです。
 また、体を動かして汗をいっぱいかくので、新陳代謝が活発になり、汗腺も筋肉もよく発達し元気そのものだったのです。

 昔の人は、米、魚、海藻、野菜を中心とした、その地その地で採れる旬のものを食べていました。
 ご飯を基本に、肉、魚、野菜などを組み合わせた一汁三菜のいわゆる「日本食」が食生活の中心だったのです。この日本食は、ビタミン・ミネラル・食物繊維などを豊富に含み、栄養価の面で非常に優れています。この一汁三菜の日本食は、現在世界的にも理想的な食事として見直され高い評価を受けています。
 また日本食の定番、味噌やお新香などの発酵食品は、腸内環境を整えてくれるので、自然とお腹が守られ健康に役だっていたのです。

 昔の日本では伝統的に糞便(ウンチ)をリサイクルして有機肥料として使用していました。
この有機肥料で農産物を作るので、自然とお腹の中の寄生虫である「カイチュウ」や微生物に多くの人が感染していきました。昔の日本ではウンチは身近で生活に欠くことのできないものだったのです。
 このように、もともとカイチュウなどの寄生虫やバイキン類と人間とは「共生」していました。害を与えるものもありますが、ほどほどのバイキンがないと人間は生きられません。昔の生活はそれがほどよくなされていたのです。

 日本では昔から「虫」に関する言葉がたくさんありました。たとえば、「虫の知らせ」「腹の虫」「虫酸が走る」「虫が好かない」などなど。
 これらの虫は、みんなカイチュウのことなのです。
 このように昔から日本では「虫はお腹にいて嫌だけど、いても仕方のないものだ」という存在であり、虫と人が共生していたのです。

 江戸時代になると日本は鎖国状態になり、関東ローム層に呼び寄せられた100万人近い人たちの食事や燃料などをその地でまかなわなければなりませんでした。それには土地を大量のウンチで肥やさなければなりません。その結果、私たちの先祖はどんどんカイチュウに感染していったわけですが、江戸時代は大量にウンチを使うため、ものすごく値上がりして大変高価なものになったこともあるのです。実際にウンチ問屋があって、ニオイでウンチの等級を分けたりしていたという嘘か本当かわからないようなことが起きていました。
 このようにウンチを世界で唯一上手に利用していた江戸時代の日本は、リサイクルが非常にうまくいっていたすばらしい国だったのです。

 実はこの「カイチュウ」が、花粉症やアトピー、気管支ぜんそくなどのアレルギーを抑えていました。
 実際に、終戦時の1945年当時のカイチュウ感染率は約60%ぐらいだったのですが、花粉症やアトピー、気管支ぜんそくなどのアレルギー患者はほとんどいませんでした。
 このように昔の人たちは、自然とお腹にいいライフスタイルや食生活を送り、腸内環境のバランスがほどよくとれていたので、健康的に毎日を過ごせたのです。

 このような昔の人たちとは全く違う生活を送っている私たち現代人はどうなっているのでしょうか?
 次回、現代人のお腹がどうなっているか探っていきます。

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