世界デトックス紀行
デトックスブームが続いている今、単なる「デトックス=毒素を出す美容健康法」という流れがちょっと心配、という旅行ジャーナリストの木谷朋子さん。世界各地を旅してきた旅のプロならではの視点で、さまざまなデトックス体験、健康・美容体験を世界各国の健康事情とともにお届けします。世界的な有名スパから気軽に行ける癒しスポットまで、ヘルシー美容&料理情報なども交えてご紹介します。
 

   

第24回 ソウル・デトックス紀行 PART-5
精進料理の老舗「山村」

◆ ニューヨーク・タイムズでも高く評価された
  寺刹(サチャル)料理の老舗

最近、カラダを外から磨くタイプの話が続いていましたので、今回はちょっと中からキレイになれる話をしたいと思います。

1月に出版した韓国語本『ライブ・フロム・ソウル』の監修者である申 美花(シン・ミファ)先生が昨年教えてくださった店なのですが、ニューヨーク・タイムズで紹介されたこともある有名店。20数年の歴史をもつ精進料理(寺刹食)の老舗店で、伝統茶店や骨董店が多く集まる仁寺洞(インサドン)の小道の奥にあります。私も仁寺洞には何度も行っていましたが、取材ではいわゆる焼肉に代表されるような韓国料理の典型的な店を多く取材するため、まったく知りませんでした。

1日の野菜摂取量が異常に多い野菜好きな私。日本ではなかなか食べられない珍しい野菜もたくさん出ると聞き、まずはランチに行ってみることに。

日本ではお寺で食べている料理のことを精進料理と言いますが、韓国では『寺刹(サチャル)食』と言います。修行しているお坊さんが食べる食物ですから、肉料理はもちろんご法度。野菜食オンリーです。野菜が嫌いな人にはちょっときつい店かもしれませんが、医食同源の考えがしっかりと根づく韓国料理の中でも、寺刹食は健康食の最高峰。不足しがちなたんぱく質は豆とキノコで補い、香辛料にも刺激物を使いません。また、添加物を一切使わないため、野菜本来の味も楽しめます。あまりにも淡白な味わいに「これが韓国料理?」と驚く人も多いかもしれないですね。あっさりした和食に慣れている日本人にはぴったりの料理ともいえます。

最近の日本の若い世代は、「濃い味でないと美味しくない」と感じる人が増えていると聞きますが、味を濃くしないと味がわからなくなるのは味盲の始まり。別にグルメにならなくても、野菜の素材の味をわかるような繊細な舌を持って欲しいな〜と感じます。薄味がまずいと感じるのは、味付けの濃い欧米料理に慣れてしまったせいでしょうか?いつかぜひ料理の専門家に伺いたいなと思っています。

◆ メニューは「山村精進韓定食」の1種類のみ
  野菜づくしの20種のコースメニューに圧倒!

お店で渡されたニューヨーク・タイムズの記事のコピーを見ると、記事が掲載されたのはなんと1986年のものでした。有名なコリアン・テンプル・フードとして紹介され、カラダにいいだけでなく美味しい寺刹食であることが書かれています。

社長の金演植(キム・ヨンシク)さんは、18年間仏教僧であった経験を生かし、32歳で僧をやめた際、この寺刹食を大衆化させようと決意して、この店をオープンさせたとか。もともとお寺でお坊さんたちが食べる寺刹食は、新鮮な野菜と薬効の高い植物を併用して料理されたものが主流ですが、この店では、寺刹食では使わないオシンチェと呼ばれるネギ、ニンニク、ニラ、ホンゴなどの野菜も出すなど、寺刹食のエッセンスを守りつつも、微妙にアレンジして出しています。

メニューはコース料理「山村精進韓定食」の1種類だけ。20種類の料理が次々と運ばれてくるので、テーブルはあっというまにお皿で敷きつめられていきます!最初は「精進料理じゃおなかはいっぱいにならないかもね〜」と思っていたのは大きな誤り!そのボリュームにただただ圧倒されました。日ごろ大食を自負する私でも、最後のデザート「油密菓(もち米で作った韓国伝統菓子)をおなかに入れるのが大変だったくらいです(でも食べましたけど)。

ランチとディナーはまったくメニューが同じで、ランチが19,800ウォン、ディナーが35,200ウォンと値段だけならランチがおトクです。ただ、ディナー時の午後8時から伝統舞踊ショーがあるということなので、今度はディナー時に行きたいと思いました。

しかし、レストランの入れ替わりが激しいソウルで、オープンして20数年がたっても人気が衰えないのは本当にすごいことです!ここ数年来続く韓国のウエルビンブーム(健康ブームのこと。Well-beingの造語)も追い風にはなったのかもしれませんが、20数年前からあった店ですから、これからも流行に流されることなく、営業を続けて欲しいです。

とにかく「野菜をたっぷり食べたい人」、「美味しくてきれいで健康になれる料理を食べてみたい人」に行ってみて欲しい店です。精進料理というと構えてしまう人には「オーガニック野菜」と捉えてみると、少しなじみが出てくるかもしれませんね。

新鮮で質の高い野菜は、カラダの血液をキレイにする効果がありますし、やはり寺刹食ですから「心身の浄化作用」も抜群。日本でも生活習慣病として社会問題化している「メタボリックシンドローム」の予防効果もあり、日本と同様近年肥満傾向の韓国でもこの店が話題になったのは頷ける現象です。

店のスタッフはカタコトの日本語しかできないものの、メニューはたった1つ(コース料理)ですので、オーダーの際に困ることはありません。ソウルへ行ったらぜひ寄ってみてください。

【山村精進韓定食】(季節によって食材が変わります)
     
・ 前菜(季節の粥)
・ 水キムチ
・ ビン(ソバ粉の生地に野菜を包んだもの)
・ 山菜和え物の盛り合わせ
・ キムチ
・ 野菜の当座煮
・ ワラビとキキョウ
・ 揚げ昆布
・ 豆腐と野菜の煮物
・ ムク(緑豆、どんぐりの粉で作った寒天)
  ・ ジャガイモ料理
・ つるニンジンの和え物
・ 山村チャプチェ(野菜と韓国春雨の炒め和え)
・ 野菜の天ぷら
・ 香草の和え物
・ チジミの盛り合わせ
・ ご飯(豆やあわなどを使った五穀米ご飯)
・ チゲ
・ 伝統茶
・ 油密菓(もち米で作った韓国伝統菓子)

山村(サンチョン)
住所 : ソウル市鐘路区寛勲洞40
TEL : 02-735-0312、733-0709
営 : 11:30〜22:00(伝統舞踊の公演:20:15〜21:00)
休 : 旧正月、秋夕
URL : http://www.sanchon.com(日本語あり)
アクセス : 地下鉄3号線安国駅から徒歩10分

 

 



お店は仁寺洞(インサドン)の入り組んだ小道の奥 にある。初めての人だとちょっと見つけにくいかも。



エントランスを入ると店内は広々とした空間。壁に はニューヨーク・タイムズの記事が拡大コピーされていた。



20種類の「山村精進韓定食」の2人前。



同じく「山村精進韓定食」。蓋のついた入れ物には 香草の和え物が入っている。



店内に置かれている本物とレプリカの韓国の仏教古 美術品。おみやげ物コーナーになっていた。



店内の中庭部分は天井がガラス張りになっていてと ても明るい。内装は韓国伝統の韓屋スタイル。オンドルの座敷 席とテーブル席が用意されていた。

第20回 以前のコラムはこちらから
第21回 ソウル・デトックス紀行 PART-2 韓方エステで韓方美容の極意を体験
第22回 ソウル・デトックス紀行 PART-3 韓国の伝統式サウナ 汗蒸幕
第23回 ソウル・デトックス紀行 PART-4 ソウルっ子御用達の汗蒸幕
第24回 ソウル・デトックス紀行 PART-5 精進料理の老舗「山村」
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