世界デトックス紀行
デトックスブームが続いている今、単なる「デトックス=毒素を出す美容健康法」という流れがちょっと心配、という旅行ジャーナリストの木谷朋子さん。世界各地を旅してきた旅のプロならではの視点で、さまざまなデトックス体験、健康・美容体験を世界各国の健康事情とともにお届けします。世界的な有名スパから気軽に行ける癒しスポットまで、ヘルシー美容&料理情報なども交えてご紹介します。
 

木谷朋子
PHOTO:Turkish Bath & Health Spa, 木谷朋子

第42回 イギリスの温泉町 PART7
ハロゲイトのターキッシュ・バス その3

◆ 1897年当時のインテリアを忠実に復元

前回、ターキッシュ・バスの入り方について書いたので、今回はこの施設の歴史の話をもう少ししたいと思います。ターキッシュ・バスのスタッフによると、毎週水曜日に、この施設の歴史的な話を聞くことができる館内見学ツアーがあるそうです。でも私が行ったのは火曜日。う〜ん残念!

私がここに来て一番驚いたのは内部の華麗なインテリアでした。スパとしての規模はヴィクトリア時代よりも小さくなっているそうですし、私自身もそれほど広いとは思わなかったのですが、いにしえのターキッシュ・バスの雰囲気を保ちながら、実際に利用している、というところが素晴らしいと思いました。日本人だったら、たぶん修復したとしても、歴史施設として博物館などにしてしまうでしょう。

入口から入って、レセプションに向かう廊下に、このターキッシュ・バスのオープン当時の写真が展示されていました。中には、かなり怪しげな施術があって、これが健康的?と思われるものもありましたが、水圧マッサージや硫黄の泥トリートメント、今のヴィシーシャワーに似たもの、かけ湯、ホースでお湯をかける(これは、タラソテラピーセンターで似た施術を見たことがあります)などなど、さまざまなウォーター・トリートメントを行う写真はかなり興味深いものでした。

◆ ウォーター・トリートメントの健康効果を
  知っていたヴィクトリア時代の人々

私が驚いたのは、ヴィクトリア時代にすでに「ウォーター・トリートメント」の健康効果をイギリス人が知っていたことです。というのも、私の今までのイギリス人への印象は「お風呂にはあまり入らない。入っても短時間でシャワーをちょっと浴びる程度」というものだったからです。ヴィクトリア時代の人の方が今のイギリス人より進んでいたのかもしれません。

実際、ヴィクトリア時代にハロゲイトを訪れるイギリス人は、お風呂の効用に並々ならぬ関心があったようで、2〜3週間この地に逗留し、ターキッシュ・バスに入り、飲料用のいかにもまずい硫黄鉱泉水を嬉しそうに飲んでいたといいます。ただ、私が思うに彼らは決して健康おたくだったわけではないと思います。

あの時代、こういったスパ施設に通うことが「おしゃれ」だったのです。当時の最先端の休暇の過ごし方が「スパへ行くこと」だったとは、私もイギリスへ長年通ってきましたけど、今回改めて知らないことがまだまだあるな〜と感じました。

◆ 建築的にも見るべきものが多いターキッシュ・バス
  冷水プール脇のウェッジウッド製のタイルは必見!

さて、施設のインテリアの話へ少し戻ります。前回も少し触れましたが、入口からチェンジング・コンパートメント(更衣室)はすべてオーク材です。これは当時のものを修復して使っています。必見は、修復前にはペンキが塗られていて見る影もなかったリラックスルームの天井にあるステンシル画です。これは当時の写真をもとに復元されたもので、写真は白黒だったにもかかわらず、ペンキの下から現れた当時のステンシル画をやっと見つけだし、色を確認する作業を行ってから、復元したそうです。すごい執念ですね。

さらに、リラックスルームのモザイク床も当時と同様イタリア製のタイル材を使い、わざわざイタリアからタイル職人を呼んで作らせたというこだわりぶりです。このターキッシュ・バスに入った瞬間、私が思わず「綺麗〜」と言ったのも、修復した人々の努力が影にあったと聞くと、なんだか感慨深いです。

さらに内部には、ステンドグラスや冷水プールのタイルが…。特に冷水プールのタイルは当時(今もかな)のイギリス陶磁器のトップメーカーだったウェッジウッド製であることがわかり、柄のパターンを忠実に再現しながら、ひとつひとつ手で復元したそうです。ただ、ウェッジウッドには復元を頼めなかったようで、別のメーカーが行っています。

実は、ヴィクトリア時代、ウェッジウッドは一般にはタイルを製造していませんでした。このターキッシュ・バスのためにだけタイルを作ったというのは、歴史的には貴重な話です。

この施設の中でも、保存状態がほぼ完璧だったのは、ドライルーム(高温サウナ)の部分でした。真鍮製のシャワーは少々古びていたので、これは修復したの〜?と思っていたのですが、どうもほぼ当時のままのようですね。もちろん、水周りのパイプなどはすべて新しくしているのでしょうけれど、見える部分はすべて昔のまま、というのがさすがイギリス!という感じです。

今回予約がとれなかったトリートメントを行うトリートメント・ルームやメンバー用のジャグジーなども、トリートメントを受ける際には利用できますが、こちらの施設は新しく作ったようですね。

エキゾチックな雰囲気のターキッシュ・バス体験は、あっというまの3時間。私的には、バースのスパとはまた違った意味でハマリました。今回は、女性専用の日に行ったので、水着を半分脱いでしまっているおばちゃんたちもいましたが、ミックス(男女一緒の日)やカップルの日の雰囲気もちょっと見てみたいと思いました。次に来るときには3日間は滞在したいな〜と思いつつ、私のハロゲイト往復6時間の日帰り温泉ツアーはあっというまに終わり!もちろん、帰りには、ベティーズでオリジナル紅茶とケーキを購入。ロンドンへ向かう列車の中でも食べておりました。

次回は、この秋日本でも公開される映画『ミス・ポター』で注目を浴びている北西イングランドの景勝地「湖水地方」で見つけたスパ・ホテルのご紹介をしたいと思います。ピーターラビットの故郷であるニア・ソーリー村から車でほんの10分ほどの湖畔沿いのホテルです。

【ハロゲイトを知るためのミニ知識】

●ターキッシュ・バス&ヘルス・スパ Turkish Baths & Health Spa http://www.harrogate.gov.uk/turkishbaths
【住所】Royal Bath,Parliament Street,Harrogate
【電話】+44(0)1423-556746
【入館時間】《男性専用》17:30〜21:00(月)、13:00〜17:00(水・金)、《女性専用》9:30〜17:00(月)、13:00〜21:00(火・木)、9:30〜12:30(金)、9:30〜13:00、13:30〜17:00(日)《男女一緒の日》9:30〜12:30(火)、17:30〜21:00(水、金・日はカップルのみ)、9:00〜11:30、12:00〜14:30、15:00〜17:30(土)
※スパ・セッションのみの利用は予約不要。トリートメントを受けたい場合は要予約。
【料金】オフピーク£10、ピーク(土日)£15、オフピーク&ピーク以外£13
●ハロゲイトへのアクセス ロンドン・キングスクロス駅から列車で2時間30分〜3時間。ヨーク経由、リーズ経由の2つの行き方がある。ヨーク経由の方が最短距離。
●ハロゲイトの旅行情報 http://www.harrogate.gov.uk/tourism
● 英国政府観光庁のサイト(日本語)http://www.visitbritain.com/jp

 

 



1897年にターキッシュ・バスがオープンした当時の外観



レセプションにディスプレイされていたターキッシュ・バスの案内



リラックスルーム。ステンシル画の天井とイタリア製タイルのモザイクが美しい。ペンキで何重にも塗られていたものをはがして復元したそう



三段階の温度に分かれているホットルーム(ドライサウナ



Plunge Pool(冷水プール)のタイルはなんとウェッジウッド製だった



ヴィクトリア時代の写真。水圧によるマッサージ・トリートメント



ヴィクトリア時代の写真。ウォーター・トリートメントの真っ最中

第40回以前のコラムはこちら
第41回 イギリスの温泉町 PART-6 ハロゲイトのターキッシュ・バス その2
第42回 イギリスの温泉町 PART-7 ハロゲイトのターキッシュ・バス その3
第43回 映画『ミス・ポター』のロケ地「湖水地方」で見つけた湖畔のスパ・ホテル
第44回 ハワイの名門ホテル「ザ・カハラ・ホテル&リゾート」
第45回 「ザ・カハラ・ホテル&リゾート」のスパ・スイート
第46回 スピリチュアル・アイランド ハワイの大自然に宿る神秘
第47回 スピリチュアル・アイランド ハワイのスピリチュアル・スポット
第48回 映画『ミス・ポター』と湖水地方
第49回 日帰りで行けるシティ・スパ「テルムマラン ヨコハマ ベイ」 PART1
第50回 日帰りで行けるシティ・スパ「テルムマラン ヨコハマ ベイ」 PART2
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